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いつの間にやら増えていた@スピニングリール [フィッシング・タックル]

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 ずっと前から、スピニングロッドを使う時、リールはいつもオービスかミッチェルを使ってきましたが、ここしばらくはウルトラライト(UL)からミディアムヘビー(MH)クラスまでオービスのシリーズを揃えた関係で、ミッチェルはあまり持ち出さなくなっちゃいました。そんな状況でも、スピニングリールそのものが好きなワテは、やはりビンテージもので有名なアルチェードと言うメーカーのUL級のリールを何年か前に入手して箪笥の肥やし状態で持っていました。しかし、ちょっと国内では高目でなかなか買う気が起こらなかったアブ・カーディナルが、ほぼ新品で格安に出ていたので、思わず勢いで買ってしまったのがいけなかったんでしょう。こうなると、名立たる6・70年代もののインナースプール時代の各国の有名モデルを比べてみたいと思い、ついつい別にペン(米)のULモデルもGETしてしまいました(^∀^)v ちなみに、これらのOldタックルは、ともすると日本でこそそこそこの値段が付けられることも多いのですが、eBayオークションではせいぜい50ドル前後で落札できるものが多く、実は今手に入れようとすると結構リーズナブルな値段なんですよね。
 そこで、これらを同時に使ってほぼ同じ条件で印旛沼にてルアーを投げ比べてみましたが、何しろもう冬ですから、釣果については聞かないことにして下さい(笑。あ~あ、管理釣り場のニジマスでも釣ってこようかな(^∇^)。

 と言う訳で、まずはこれらのULクラスのスピニングリールを軽くご紹介しておきます。
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 最初はおフランス製のMitchell 308から。このモデルは60年代に作られたもので、80年代後半に経営が変わるまで同じ機構で生産され続けられました。それ以降は台湾製になり、機構も大きく後退したものが作られましたが、長らくベイトロッドのアブに対しスピニングロッドはミッチェルが定番でしたね。このリールの刻印には「garcia Mitchell」と刻まれていて、今のアブ・ガルシアと同じアメリカの業者が米国内に輸入したモデルになります。
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 お次はスウェーデン製のABU Cardinal 33。このリールはやはり60年代に生産が始まったカーディナル3のマイナーチェンジ版で、姿形は同じですが、元のベージュ色ボディと黒いアウター・ローラーのカラーが、ご覧のように濃い緑のボディと薄い緑色を帯びたクリーム色のアウター・ローラー回りに変更されました。尻に付いているのはドラグ調整ノブで、ここは最初に出た33モデルでは濃い色のものが使われていたようです。我が家にあるものは70年代後半に輸入されていた頃の復刻モデルで、アブはベイトリールでもそうですが、ちょくちょくOLDモデルを少数復刻させて、消費者心理を突いて上手に商売しています。カーディナル33はこの後も再度復刻モデル(ベージュ色ボディ)が作られています。
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 こちらは今ワテがメインに使っているORVIS 50Aです。オービスはフライフィッシングのタックルで有名なアメリカのメーカーですが、フライロッドやリールはイングランド製、ルアー用のリールはイタリアの「Pelican(ペリカン)」と言うブランドのモデルを作っていた「Coptes(コプテス)」と言うメーカーに生産を受注していました。ですから、このモデルとそっくり同じものがペリカン名でも売られていました。60年代に登場していますが、80年代前半まで売られていたようです。
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 この小さいモデルはALCEDO MICRONと言うイタリア製で、50年代から80年頃まで作られた長寿モデルです。実はこのアルチェードと言うメーカーも同じデザインでミディアムクラスのリールを作っていましたが、前記コプテス社に生産が移ってからは、このミクロンだけが生き延びたようです。これは初期のモデルで、ドラグの調整ノブは後期のものと違って円盤型になっておらず、ただの三つの板が三ツ矢サイダーのマークのように配されただけのデザインになってます。ボディもまだらなグレー塗装が施されていますが、後のモデルでは青っぽい色合いのものになりました。
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 この金色のパーツが目立つリールは、アメリカの有名メーカーから売られていたULクラスのPenn 716Zです。いかにも70年代のアメリカ的なその色合いや雰囲気は、現在の派手なデザインの国産スピニングリールに通じるものがあるような気がします。ただし、ペンのリールは金色パーツを抜きにして見ると、実にオーソドックスな風貌ですね。

 次に、それぞれのリールの特徴をご紹介しましょう。13年12月4日スピニングリール7-520.jpg
 まずはミッチェル308ですが、このリールの重量は、画像の糸巻き状態で200gです。スプールが奥に引っ込んだ状態での前後長は105mmで、ハンドル(クランク)やベールを下に向けた状態での全高は93mmになります(以降全て実測値)。
 起こしたベールを戻す際に、わざとロックを解除する位置の直前まで回しておいて、そこからハンドルを回してベールを戻す時にどれ位の力を要するかで他のリール共々比較したところ、ミッチェルは最も軽い力で戻せました。ともすると、ひっかかりやすい位置でのものだけに、これはかなりスムーズです。回転の軽さは2番目に軽く、しかも回転するアウター・ローター内側に入るバランス取りの重りがそれなりの重量のため、回転し始めると遠心力が働いてより一層軽くなるような印象になります。回転音は中程度のものですが、「カチャカチャカチャ…」と言う具合にちょっとラチェット音が荒い感じです。ロッドに固定するフットは幅広で肉厚ですから、上下のリングとコルクグリップにフットを挟むタイプのロッド(画像のようなタイプ)では、結構きつく締め込まないといけません。
 機構的には非常に凝った作りで、スプールを単純に前後させるだけでなく、一度途中で戻ってから進むような複雑な動きをします。そのために巻いた糸はわずかに樽型に中央が膨らむ感じになります。これはメインになるギアの内側に遊星ギアを組み入れ、これがメインギアの動きと別の動きを起こし、それがスプールを前後させる軸を動かすようになることからくるものです。
 スプールはドラグ調整ノブの中央にあるボタンを押せばワンタッチで外れるタイプで、かなり早くからこの機構を取り入れていることになります。ドラグは平凡なねじ込み式で、スプールに板羽根とノブが組み込まれるタイプです。
 クランクハンドルは後ろ側のバランサーのようなネジを緩めてノブの向きを反転させておくだけで、あまりコンパクトには収納できません。ノブの形状はよじれているような形状で、これのおかげで指がしっくり収まるようになっています。
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 アブ・カーディナル33は前後長100mmX高さ101mm、重量が200gになります。ギアの構造は平凡なピニオンギアで、スプールも単純なL字アームで動かすものです。これに対し、ドラグ機構は凝っていて、スプールを前後させる軸に付くクラッチ板を後ろから押す形にしています。ただし、後のアウタースプールのリールと違って、ノブを真後ろではなく、より面倒な機構になる斜め後ろにノブを設けるために、V字に曲がった板を用いて押さえ込む力を軸に伝達しています。この位置にドラグのノブがあると、巻き取り時に指が掛かりやすいので、咄嗟に調整したい時も問題なく扱えます。この後ろに付いたドラグのために、スプールはミッチェルと同じくボタンで簡単に取り外せるタイプですが、当然ドラグ用の板羽根はここに付いていません。スプール自体は結構前後方向に薄く溝は深い感じで、ルアーを投げる際に飛距離はあまり出ない作りです。材質はミッチェルもそうですが、プラスチック製でちょっと頼りないです。
 画像の古いグリスをパーツクリーナーで洗い落とし、新たにABU純正のグリースを適量塗ってチェックしたところ、回転の軽さは4番目で、少々重い感じです。やはりバランサーの重りにあたるアウター・ローター内側底部の金属部分が結構大きいため、これが回転の重さにつながるんですが、反面、早回ししてもあまりブレることはなく、良くバランスが取れています。ラチェット音は「チィィィ…」と小さな音量で小刻みですから、ハンドルを回す重さも加わって、何かしっとりした巻き心地に感じられます。ただし、早巻きすると、別の音が「チャッチャッチャッ」と加わり、ちょっと気になるところです。ベール戻しにかかる力は4番目に重いですが、アウター・ローターが回転しさえすれば、ベールの戻りはちっとも重くないです。クランクアームは逆回転で緩んで折り畳めますが、かなり折り曲げても出っ張ります。アームの形状が板をコの字に折り曲げたような断面のもので、個人的にここがイマイチだと感じます。ノブは横から見て平行四辺形になっていて、つまみ具合は良好です。
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 オービス50Aの寸法は前後107mmX高さ89mmで、意外にも前後長で一番長く、反対に高さで一番低くなりました。見た目はかなり小さいのですが、ドラグ調整ノブの形状が前にかなり飛び出しているもので、これが影響しているのは間違いないですね。実際、重量は155gで最軽量でした。
 ハンドル回転の軽さは最も軽く、ベール戻しの力も2番目に軽いので、非常に使い勝手が良いです。ラチェット音は「チチチ…」と高音ですが、アブのように小刻みではありません。早巻きすると、バランサーの重りが小さいためにプルプルと振動が出ます。
 機構はシンプルそのもの。一番オーソドックスなタイプですが、メインギアの向こう側に刻まれた逆回転防止ラチェット用のギアと、ラチェットのアームとの連結がちょっとキツ目で、テンションが掛かっている時にロックを解除しようとしてレバーを倒そうとしても、結構重い点が残念ですね。
 スプールはドラグノブを最後まで回して外してから抜き取るタイプで、後にスプール径が拡大された75Aと言うモデルでやっとプッシュボタン式になりました。
 クランクハンドルは逆回転させれば緩み、折りたためるようになっていて、つまみの形状も薄目の琵琶形でつまみやすいです。フットの肉厚は薄く、幅も狭いので、画像のタイプのロッドでは奥までリングを締め込めますから具合が良いです。逆に、ねじ切られたリングを回して押さえ込むグリップでは、奥まで回してもフットまで至らずにユルユルになってしまうこともありますので、あくまでもULロッド専用となります。
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 アルチェード・ミクロンは最もコンパクトで、前後長88mmX高さ95mm、重さ165gになります。回転の軽さは3番目で、ラチェット音は「カチカチカチ…」と言う具合の高いものです。ベールの戻りに要する力も3番目になり、意外と堅目です。これはベールスプリングが強いものを用いているからだと思われますが、このベールは180度以上起こすことになり、他のリールよりも3割程多く回転させるので、必然的にきつくなるのでしょう。そうした構造に耐えるべく、スプリングも丈夫なものが入っているのかも知れません。
 このリールの特徴は、軸を前後させるL字アームとギアの接続方法で、そこに長い溝を切り抜いてその中でビスとスペーサーが上下に動き、これによって狭いスペースで軸を多く前後させることになっています。逆回転防止を解除するノブは、他のリールのようなレバー式ではなくボタン式です。クランクハンドルの斜め後ろにあるボタンを引けば逆回り防止になり、押せば解除されてラチェット音も消えるようになっています。
 ドラグはスプールを直接締め込んで抑えるタイプで、スプール交換もこのノブを回して外すもの。ハンドルの折り畳みはちょっと変わっていて、他のリールのように軸が逆回転で緩むことはありません。初めから一定の量だけボディから出て固定されており、そこにリングネジが2つ噛んでいて、それを一方はボディ側、もう一方はハンドル側に締め込んでおいて用います。ハンドル側のリングを緩めてボディ側に寄せると、ハンドルの蝶番がフリーになって畳める仕組みです。ただ、この形体は、使用時にも軸に刻まれたネジ山が絶えず見えることになり、少々見た目に悪いですね。
 なお、このリールのハンドルノブは、本来プラスチックよりちょっと柔らか目の硬質ゴムのような材質のものですが、経年劣化によるベトベト&ひび割れのため、自分で同じような形状に木を削って作ったものを取り付けています。オリジナルのものは中央が軸と同じ方向に両面とも凹んでいて、そこに「ALCEDO」と文字が刻まれていますが、つまんだ感じは中途半端に肉厚ですので、さほど良いとは思いません。
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 最後にアメリカ代表のペン716Zで、サイズはミッチェルとほぼ同じで前後長が105mmX高さ95mmですが、重量は最も重く205gになります。クランクを回転させた時の手応えも一番重いのですが、一旦巻き始めてもその手応えがずっと残る感じで、軽快感はないです。ラチェット音は「カチカチカチ…」と言う感じの低目の音ですが、それ以外に「ソワソワソワ」と言う具合に、何かのこすれるような回転音が響きます。多分、この音はギアと連結するL字アームのものなのでしょうが、画像のようにこのリールもアルチェード・ミクロンと同じタイプの軸部分が上下する形式のものを使っています。
 ベールの戻しの際に最も強い力が必要で、かなり力を掛けないと戻りません。しかし、あくまでこれはロック解除直前の位置に合わせておいての話で、一旦わずかに逆回転するハンドルを戻して、もう一度その分回転させれば、非常に軽やかにあっさりとベールが戻ります。
 スプールはやはりミッチェルと同じくボタンで外せるワンタッチ式。ドラグ調整もミッチェル同様のもので、スプール内に板羽根を設けてそれを上からノブで締め込むタイプになります。
 ハンドルの折り畳みもミッチェルと同様にバランサーのようになったネジを緩めてアームを少し抜いた状態にして反転させ、ノブを内側に向けるだけのものです。ただ、ミッチェルの場合クランクの軸は固定されておらず、逆回転させれば外れますが、ペンはボディ側の基部に小さなマイナスネジが入っていて、クランクの内側の軸に刻まれた溝にこの先端が噛み込んで、クランクの軸が抜けないようになっています。ハンドルノブの形状はT字形ですが、何の工夫もない肉厚の角断面なので、つまみ具合はあまり良くありません。
 フットの大きさはあまり大きくはないですが、肉厚ですからリングで押さえ込むタイプのグリップでは、これまたミッチェルと同じくなかなかしっかり奥までリングを噛み込ませられません。

 以上で概ね各リールの特徴は書き上げましたが、実際にルアーを投げた時の感覚はどうなのか、次に記しておきます。使用したロッドはUFMウエダ・スーパーパルサーII CSII-602で、6ft・2ピースのULクラスのロッドです。これに各リールを装着し、ルアーはラパラのマイクロクランクと言う5gのクランクベイトをキャストしました。場所は印旛沼です。
13年12月7日印旛沼スピニングリールテストMitchell-520.jpg
 ミッチェル308は以前よりファメルソルトウォーター(YAMATOYO製)の4lbを付けていたので、今回もそのまま使用しています。ベールを起こして軽くスナップを利かせて投げますと、何らストレスを感じることなくスムーズに糸が流れ出て行きます。これはスプールに糸が巻かれた際の形が樽型になっているのが良い影響を生み出していると思われます。スプールも縦に長目ですから、スプールが抵抗になる可能性が弱められているんでしょう。ルアーの着水位置を調整すべく、軽く人差し指を出してサミングしますが、ちょっと位置が遠目のために、目一杯指を真っ直ぐ伸ばす感じになります。着水後にクランクを回してベールを戻しますが、ベールの形状がU字形で先端が横に張り出していて、ともするとロッドを握る人差し指に当たることがあります。ベールの戻りは軽やかだけに、この点でちょっとマイナスですね。
 巻き心地も軽快で良好。逆回転防止ストッパーの解除もスッキリできます。回転量はクランク1回転に対し、ローラーは4.5回転になります。ドラグを緩めた時のラインの出は可もなく不可もなし。バトル中にドラグ調整するにはノブの指掛かりがあまり良くないので、ちょっと面倒ですね。また、リールフットが幅広・肉厚なので、ロッドのリングが奥まで噛み込まず、外れやすくなってしまうために何度も締め込み直す必要があったのもマイナスです。しかし、全体としてはインナースプールのリールにしてはとても良く飛び、巻き取りも大変軽やかなので、ランクは相当高いです。
13年12月7日印旛沼スピニングリールテストABU-520.jpg
 アブ・カーディナル33はロッドに装着して持ったところ、若干重さを感じました。ウルトラライトよりもライトクラスのロッドが適当かも知れませんね。ラインはサンラインのバススペシャル5lbを巻いています。ミッチェルよりわずかに太いので、少しは飛距離の差に影響が与えるかも知れませんが、それよりもスプールの形状がその差に最も影響するでしょう。実際に投げたところ、飛距離は明らかにミッチェルより劣りました。スプールが上下に扁平で平べったく、糸巻き量を稼ぐために深溝になっていますが、このタイプのものはどうしても糸を送り出す際に糸同士で干渉したり、スプールの前側のエッジに触れやすくなったりするため、飛距離が伸びないのは仕方ないのでしょう。しかも、糸巻き後の形状は横から見て台形になり、下が多く巻かれて前方は少な目の巻き量になるために、糸が送り出される際に下の糸を引っ掛けることがあると、それが絡まって出やすくなります。多く使ったヨレた糸では要注意でしょうね。
 ルアーを投げ込んだ後のサミングは、ミッチェルと程ではないですが、人差し指を結構伸ばすことになります。しかもスプールが前に出ていない時は指を後ろに寄せないとスプールのエッジと指で糸を挟むのは難しくなります。着水後のベールの返しは若干重目で、ロック解除の直前の位置から回す際にはかなり力を掛けることになります。ハンドルの逆方向への戻り量は少なく、ラチェットのギアが細かいことが分かります。巻き心地は軽くはないものの、程好いテンションが掛かる感じで良好です。回転比は1:5でミッチェルより若干高速型です。逆回転防止ストッパーの解除は、ミッチェルと異なって樹脂製のスライドボタン式です。このリールはベールの基部やドラグノブにもプラスチックパーツを使っていて、少々頼りない感じがしないでもないです。しかし、このリールの一番の利点はその後方に付いたドラグ調整ノブで、これのおかげでバトル中も何ら慌てることなく調整できるでしょう。
13年12月7日印旛沼スピニングリールテストORVIS-520.jpg
 オービス50Aもサンラインのバススペシャル5lbを巻いています。いつもこの状態で使っていますので、ちょっと糸が疲れているかも知れません。軽いベールを起こして竿を振ると、ラインがスッキリ飛び出してくれます。スプールの形状が糸の抵抗にならないように角が厚味のある丸形で、直径が小さいスプールの割りに飛びは悪くありません。サミングは人差し指を真っ直ぐ伸ばすとスプールの真横まで指が届くことになります。上から見てオービスが3時の位置だとすると、ミッチェルやアブは5時の位置になりますんで、差は歴然です。糸の押さえもスムーズですから、この点では一番良好ですね。ただし、ドラグ調整ノブの形状が問題で、つまんで回しやすいのは良いのですが、出っ張りが多くて、投げた直後の弛んだ糸を巻取る際、ここに糸が掛かって、それに気付かずそのまま巻いてしまうと、次に投げる時にここに送り出す糸が引っ掛かりやすくなって、それでノブに掛かった糸が外れてスプールの下の方でほぐれた糸が大きな輪を作って宙ぶらりんになって、出て行く糸にからみ付きやすくなることがあります。巻き初めの際に時折リールに目をやって確認してやる必要があるでしょうね。
 ベールの戻しは軽快で良好です。巻き取りも軽やかで、回転比は1:5でアブと同じです。早巻きでは首がプルプル震えるような振動を発してしまうのはちょっとマイナスポイントですね。ドラグの調整は指掛かりの良いノブのおかげで、やりやすい方です。ちなみにスプールは時計回りにしか回りません(ミッチェルやアブはどちらにも回ってしまいます)。
 フットの幅は狭く、厚味も薄いので、画像のようにロッドのリングがかなり奥まで締め込まれ、ロッドを握る掌の中に完全に収まるので、緩むことはあまりないのは良いですが、この小さ目のフットのせいで、ライトクラスのロッドでは奥まで締め込んでも緩々になってしまうこともあります。また、このリールの数少ない欠点は、逆回転防止を解除するレバーがキツ目で、テンションが掛かっているとなかなかこれを倒そうとしても動いてくれないことです。しかも、このレバーの形状が見た目に良くても、使い勝手の点で悪い上に小さいので、力を掛けてつまんでいると指が痛くなります。しかし、実際に使った感覚では、巻き上げの際の抵抗も少なく、総合的にはかなり良いことは間違いないです。
13年12月7日印旛沼スピニングリールテストARCEDO-520.jpg
 アルチェード・ミクロンは本体が最も小さい割りに、フットの大きさはアブと同じくらいあります。でも、この位がULクラスのリールでは普通なのでしょうね。ベールを起こして投げようとしますが、ここで問題が。ベールのラインローラーの後ろにナットが出ているんですが、ここがベールを起こす際にフットの軸の位置にこのベールの突起があると、このナットがフットの付け根に当たってしまいます。これは明らかに設計ミスでしょうね。おかげでこのリールもフットの付け根の塗装が一部削られて剥がれていました。ラインはサンラインのバススペシャル4lbが巻かれています。ルアーを投げた際の飛距離は可もなく不可もなしと言う感じ。スプールの形状がオービスのように角を丸く仕上げていないので、多少の抵抗にはなるでしょうね。サミングは本体が小さいだけに指が簡単にスプールの真横に着きます。ベールの戻しは平均的な重さで、別段問題はないです。回転比は1:5でわずかに高速型ですが、クランクを回す感触は軽快です。逆回転防止ストッパーを解除するのはボタン式で、押した状態でフリーになります。いつ何時でもスムーズに切り替えられるのは良いですが、うっかりボタンを押してしまって突然ラチェット音が消えて「あれ?」となることがあります。
 ドラグの調整ノブは指掛かりが良くてやりやすいですが、かなり緩めないとスプールは回ってくれません。ちなみに緩めたスプールは時計回りでも逆でも回ります。全体としては可もなく不可もなしですが、オービスに次いで軽いので、ULロッドとの相性は良いですね。
13年12月7日印旛沼スピニングリールテストPenn-520.jpg
 最後にペン716Zですが、このリールのフットはミッチェルほど大きくはないですが、厚味はかなりあるので、ロッドグリップのリングの締め込みは奥まで行きません。糸はサンラインのバススペシャル5lbです。ベールを起こすと、横にベールが寝るまで倒れてくれず、120度位のところで止まります。これでも問題はないでしょうが、糸の送り出しの際にベールに糸が触れることがあるでしょうね。飛距離はそのためかどうかは分かりませんが、ミッチェルほど飛んではくれず、アブと同じ位でした。サミングしようとしたらフットの軸の長さが長目で、ミッチェルよりもスプールが遠い感じでした。着水後にクランクを回してベールを戻しますと、ローラーの位置によってはかなり重い感触になります。その際は無理に回さず、半回転戻るローラーを逆回転させた上で、もう一度巻き込んでやると簡単にベールが戻ります。
 巻き取り時のハンドルの感触は絶えず多少抵抗があるような微妙な重さが手に伝わります。ちなみに古いグリースは完全に取り払って新たに塗り過ぎないように軽くグリスアップしておきましたんで、これより軽快に回ることはないでしょう。ドラグ調整はノブの山が高いこともあってそう悪くはないですが溝が浅くて思ったほど指の掛かりは良くはないです。このリールもドラグを緩めるとスプールが両方向に回るようになります。
 クランクハンドルのノブはT字形なんですが、角が立っているために指の収まりはあまり良くないです。これに対して、逆回転防止ロックの解除レバーは指掛かりの良い形状でとても良いです。もうちょっと巻き上げ時のクランク回転が軽快だったら良いのですが、ちょっと重たいボディも含めて、ウルトラライトよりもライトクラスのロッドで使うと良いかも知れませんね。

 以上で今回の比較テストは終了ですが、似たようなモデルでもそれぞれ特徴があって面白いものです。それに、デザインも皆個性的で、使えば使うほど愛着が湧いてくるような味わいがあって、どのインナースプールのスピニングリールも使っていて飽きないものがありますが、結論から言って、使い勝手の良さでミッチェル308が一番総合的に良いと思われますが、UFMウエダのULロッドとの相性を考えるとやはりオービス50Aがベストだと思いました。後はデザインの好みの問題でしょうが、その点でも個人的にオービスの丸味があってすっきりしたデザインは秀でていると思います。古いイタリア工業製品のデザインはどのジャンルのものでも素晴らしいですね(^∀^)v

【追記】
 注文しておいたDAM Quick 110が届いたので、スペック等を同じように記しておきます。
13年12月13日ダムクイック1-520.jpg
 DAM Quick 110はドイツ製のULクラスのスピニングリールで、1967年頃のモデルになります。この後、ダム・クイックのULクラスのリールは、70年代に入って110N→Microliteとモデルチェンジされましたが、機能的には簡素化されました。ぱっと見、ドイツ製の工業製品らしく、いかめしい感じの作りですが、パーツの制度はさすがに高いですね。
13年12月13日ダムクイック2-520.jpg
 他のリール同様、サイズを実測してみますと、前後長110mmX高さ101mmで他と大差ないですが、重量は一番重かったPennよりわずかに重く210gになりました(ラインを巻いた状態)。クランクハンドルの軽さはアルチェード・ミクロンと同じくらいでそこそこ軽いものの、回し始めても回転の重みは少し手に残る感じで、この点でアブ・カーディナル33に近い感触です。ラチェット音はオービスよりもちょっと低めで落ち着いた感じの「チチチチ…」と言う音です。ベールの戻しに掛かる力はかなり軽い方で、ミッチェルとオービスの中間と言う感じでした。これ位軽く戻ってくれると全くストレスなく使えます。クランク1回転に対するアウター・ローラーの回転数は1:4.7で、若干遅目になります。スプールはワンタッチで外れるプッシュボタン式ですが、このボタンが小さい上にあまり出ていないので、少々押しづらいのが欠点です。ドラグはスプールに組み入れられますが、ドラグ調整ノブはとても小さくて咄嗟の時に使いづらいものの、スムーズに回転してくれます。
 内部機構を見ると基本的には平凡なL字アームとメインギアを連結させるだけのものですが、実は他のリールには見られない大きな特徴があります。そこで次の画像をご覧下さい。
13年12月13日ダムクイック3-520.jpg
 分かりますか? 全く同じリールですが、このように右ハンドル仕様にも変更できるんです。後のスピニングリールはメインギアに左右両方に同じ切り欠きを設け、ハンドルの軸をどちらからも挿入できるようにして、反対側からノブでネジ止めするようになりましたが、このリールは基本が左ハンドルで、L字アームを下側に反転させて固定し、ハンドルとつながったギアと盾形のパネルを丸ごと右側に持って行って、反対側の盾形のカバーと取り替えて右ハンドル化します。しかし、ただギアの向きを変えただけではハンドルの回転方向も反転してしまいますが、このリールは面白いことに逆回転防止のラチェット解除レバーが時計回り・フリー・反時計回りと3つ選べて、この反時計回りが右ハンドル時に普通の時計回りとして使える訳です。そのラチェット機構もこのレバーが直接ギアに当たって小さく上下し、ラチェット音を立てています。このレバーを少し持ち上げて他の溝に移してラチェットを解除させる形になります。
 クランクハンドルの折り畳みはアルチェード・ミクロンのようにあらかじめ固定されたハンドルの軸が出ていて、そこにはまっているリングネジでクランクハンドルを固定したり緩めたりする訳ですが、このリングネジが「コ」の字断面のように深くなっていて、軸のネジ山は緩めてもアルチェードと違って絶えず隠れていて見えないのは良いです。また、ハンドルノブの形状はちょっと小さ目ですが、表面に滑り止め加工されてわずかに凹んでいて、指にしっくり収まるので具合が良いです。
 ULのロッドに取り付けた時のバランスは重量がある割りに良好で、サミングもしやすい位置にスプールがあって、個人的にかなり感触は良いです。
 全体として、少々重量があるものの、不思議と竿に装着して動かしてみた時には軽快感があって、良く作られていると言う印象のリールですが、前述した通り、70年に入ると110Nにモデルチェンジされ、右ハンドルに切り替える機構が省略されてしまいました。その後のマイクロライトでは、クランクハンドルの軸を左右で入れ替えて使う、70年代に一般的になった機構を取り入れていましたが、この110型のような凝った作りの左右切替機構は、何か過渡期的な匂いがして、ただ巻いているだけで楽しくなってきますね(^∀^)v


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ニッパチ

やはりULとかL〜Mクラスのリールはインナースプールが良いですね(^^)
以前、ミッチェルとアブのアウトスプールを持っていましたがほとんど使わずあげてしまいましたw
僕のお気に入りはやはりミッチェルで、ドラグもとても良く扱いやすく小さな巨人といった感じですw
アブの3番も素晴しいドラグ性能で、細いラインでモンスタークラスとファイト出来ますよね(^^)

そうそう、日曜日の大会でゴンザレスにはほど遠いサイズではありましたが47センチのキッカーが出ました!
しかし、そのウエイトは2.2キロクラスで立派なゴンザレス並のヘビー級だったそうです(^^;
勿論ルアーは巻物で、シャッドで上がったと情報をもらいました(笑
上がったエリアは僕が狙っているエリアでしたしタイミングにやられたといった感じです(^^)
by ニッパチ (2013-12-09 21:38) 

トプ・ガバチョ

>ニッパチさん、お早うさんで~す!
そうですね、小型スピニングはインナースプールのモデルがデザイン的に好きですが、それよりも今のアウタースプールのものでは、ベールの戻しの際に、ローターをクランクで回してもスムーズに戻らない場合が多く、結局手でベール戻しもする羽目になり、実は面倒に感じることがあって使わなくなったんですよ。
高性能な値の張るやつはそんなことないのかも知れませんけどね(^∇^)
インナーではやはり最もメジャーなミッチェルが総合的に優れてますね。
Pennはミッチェルの影響をかなり強く受けてますが、操作の軽やかさの点で結構差が付いてますね。
アブのドラグ調整機構はさすがに一番便利でしょう。
ちょっと樹脂パーツが多いのが残念ですけどね。

>日曜日の大会でゴンザレスにはほど遠いサイズではありましたが47センチのキッカーが出ました!

へぇ~、あの状況で釣れたんですね~。
ワテはあの後鹿島橋にも竜神橋の対岸にも行きましたが、どこもバスの気配は皆無でしたね。
そう言えばニッパチさんはここ1ヵ月くらいのうちに鹿島橋でボーマーの1/2ozくらいの前から青黄赤のように色付けされた虹色のディープクランク(リップの長いシャッドかな?)をロストしました?
あのバイクが沈んでいるところの岸っぺりで見付けて救助しました。
他に竜神橋では青い~~模様の入った変わった色合いの3/8ozくらいのシャッドが水中の木に掛かっているのを発見して、これもGET。
自分のラパラDT4も根掛り以外に2度ピンチに陥りましたが、それも上手く回収できて、魚は釣れずにルアーばかり釣れました(笑。
by トプ・ガバチョ (2013-12-10 08:28) 

ニッパチ

ボーマーは僕かも知れません(^^;
カラーも似てるし(笑
シャッドは分かりません、ロストしてるのはファットフリーだけなんでw
釣りはやはりタイミングも大事ですね(^^;
by ニッパチ (2013-12-10 12:05) 

トプ・ガバチョ

あ、やっぱり(^∀^)v
なんか、あそこで大きいボーマーを使うのはニッパチさんだけなんじゃないかと思いましたよ(笑。
フックは錆が出始めていますから、要交換ですが、今度印旛に行く時に持って行きますね!
by トプ・ガバチョ (2013-12-10 12:28) 

あさみ

古いリールいっぱいお持ちなんですね!

私も、308と復刻版33は持っていて、たまに使ってます。

33は、今、ヤマワークスという、チューニングショップに出していて、
どれくらい変わるか楽しみに待ってるところです。
by あさみ (2013-12-12 10:36) 

トプ・ガバチョ

>あさみさん、ちわっす!
てか、古いリールしか持ってないんですけどね(^∇^)b
308はインナースプールではやはり随一でしょうね。
人気があるのがその証明になります。
カーディナル33はやはりベイトリールのトップメーカーゆえの人気で、古いスピニングリールの評価の中では、そうしたブランドイメージを抜いて考えると、そう高い位置にはいないかなと思えました。
しかし、今でもチューンできるのが強みですよね。
やはり個人的には愛用するロッドとの兼ね合いで、オービス50Aが一番良かったです。
by トプ・ガバチョ (2013-12-12 12:27) 

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