SSブログ

映画に心を打たれていた@蠢動‐しゅんどう‐ [映画・TV関連]

蠢動A-520.jpg
 最近、連続TVドラマから時代劇が消えてしまいましたが、まだまだ時代劇は死んでませんね。時代劇は近年どんどん撮影場所が減ってしまって、セットもきちんとしたものを揃えるには現代劇よりも遥かに予算がかかるそうで、テレビ局がそれを回避して安直に韓流やアイドル・お笑い系のバラエティ番組を乱発し、かえってTV離れを加速させているようなところが見られます。実際、ワテがいつも観ている時代劇専門チャンネルで放送される過去の時代劇番組は、現在のチャラチャラしたTV番組とは確実に一線を画した面白さがたっぷりありまして、結果として地上波では番組をほとんど観なくなっちゃいました。でも、残念ながら大半が過去の作品と言うのは、裏を返すとかなりネガティブな要素でして、時代劇専門chがオリジナルで『鬼平外伝』のシリーズや『新・御宿かわせみ』等のドラマを製作してはいますが、やはり全体から見たらわずかな灯火のような状況でしかありません。これは映画にも言えることですが、幸い少ないとは言え、毎年ちょこちょこと時代劇映画が製作されてはいるものの、正直言って「お金を払ってまで見に行かずとも、次の年には日本映画専門chか時代劇専門chで放映してくれるさ」と言う気分しか湧き上がらない感じの作品が多かったです。そんな中でも、役所広司主演のリメイク映画『十三人の刺客』と『最後の忠臣蔵』は秀逸でしたね。しかし、劇場まで観に行くまでは至りませんでした。時代劇の火を消さないようにするには、観客がもっともっと足を運ばねばならないのは重々分かってますが、最近は近くで公開されない場合が多く、公開されても1週間もしないうちに終わってしまうようなこともあり、なかなか足が遠のいてしまってました。
 そんなワテですが、今回「これは絶対観に行かねば!」と思った時代劇映画が上映されていまして、それがこの『蠢動 -しゅんどう-』と言う作品です。実はこの作品の原型は82年に監督の三上康雄さんがご自身で主演された16mm版が作られていて、そこで重要な役回りの共演者として、ワテの大好きな役者さんの1人である西田良さんが出演していました。しかし、この映画は劇場で公開されることはなく、主要なコマに文章を添える形で三上監督のHPで発表されていたのをワテはじっくり読んで「観てみたい!」と心に思っていた作品だったんです。それが最初の撮影から20年以上経って時代劇も衰退した今、若林豪さんや我らが目黒祐樹さん、平岳大さん(平幹二郎の息子)、栗塚旭さんら豪華キャストで本格的に作り直されたのですから、期待度は観る前から膨らんでいって、今日映画館に入って座席に腰を下ろし、いよいよライトが消えて、開演早々陣太鼓の「ドンッ!」と言う大きな音が鳴った時には
破裂しそうになりましたよ\(^∇^)/
蠢動B-520.jpg
 内容はさすがに詳しく述べられませんが、一言で言って「爆発しそうな切なさ」を感じましたね。重々しい雰囲気の中で、若林豪のちょっとした表情の変化だけで全てを語るような演技や、威厳に満ちた存在感と厳しさを表した目黒祐樹らベテラン俳優陣。対する若手はちょっと取って付けたような台詞回しのように聞こえることもありましたが、基本的に今現在の言葉で話しているので、そう感じるのかも知れませんね。ただ、平岳大の容姿はその太い首周りときっちり鍛え上げられた体ともども、非常に素晴らしかったですね。正に適役でした。当然のことながら、顔付きは父親に良く似ていますが、何か少し前の渡辺謙を感じさせるパワフルさも感じられました。無表情の中に何かを伝える演技ができるのは、さすがだなと思いましたね。
 撮影も凝っていて、やたら派手な色合いが多い今の映画に対して、全て淡い色や自然の色を大切にしていて、好感が持てました。また、フィルムにしてもデジタルにしても、とにかく感度が高くなった現代の撮影において、しっかりバックをぼかして立体的な画像を印象深くしたり、反対にバックと人物を俯瞰するように離れたところから望遠で撮って溶け込ませたり、背景ともども人物をアップさせて迫力を付けたりと、構図も含めて観ていて全く飽きませんでしたね。
 時代劇の肝とも言うべき殺陣ですが、これは昔の東映風の優雅なものではなく、とてもリアルな雰囲気の力強いものでした。かなり役者さん達も体に青あざを作っていたかも知れませんね(^∀^)。殺陣は昔からその名を知られた久世竜一門を今受け継いでいる久世浩。なるほど、リアルな立ち回りはここから来るんですね。
 この映画ではテーマ音楽や挿入曲の類は一切使われておりません。エンディングで陣太鼓が長々とその鼓動を響かせますが、この太鼓の音が劇中効果的に使われていました。こんな点も「骨太時代劇」を感じさせる演出だと思います。

 この『蠢動 -しゅんどう-』を観終わった時に、ワテ自身が「言いようのない切なさ」を感じましたが、どの役も「悪」ではないのがそんな気分にさせるのでしょうか。敢えて言うなら家老の用人や、もう1人の主人公「香川」の剣術のライバルの藩士が悪役と言えないこともないですが、それも私利私欲からの行動ではないので、やはり結局誰もが悪くなくて、そうせざるを得ない「武士道」と言う彼らの生きた世の仕組みが「悪」となっているので、怒りをぶつけたくてもぶつける実体がない苦しさ虚しさはかなさが絶妙に演出されています。観終わっても色々考えさせられる映画…。素晴らしいじゃないですか! こうした時代劇映画がもっともっと創られることを願いたいですね。


nice!(3)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 3

コメント 6

HIRO

こんにちは。
なかなか良い作品の様ですね。
この前、時代劇チャンネルで、市川雷蔵の「切られ与三郎」を観ましたが、歌舞伎や歌のイメージとは異なる?なかなかな話でした。

裾野と言うか、色々なモノが揃わないと先細りに...
by HIRO (2013-10-23 11:23) 

トプ・ガバチョ

>HIROさん、ちわっす!
そうなんですよ、本当に迫力満点で、なおかつ精神的な張り詰め・緊張感が半端ないんですよね。
三上監督は話によるとこの映画を完成させるために、自らがオーナーだった会社を売却して資金を捻出したそうで、82年に自主制作版を作ってからの熱い思いを具現化したもので、そうした点からも意気込みが並大抵のものでないのが、この映画の迫力からしっかり伝わってきます。
監督さんの気合を感じる映画…、滅多にないですね(^∇^)b
by トプ・ガバチョ (2013-10-23 17:16) 

廣澤靖子

私は、小学生の頃から目黒祐樹さんの大ファンで、彼の出演番組はもちろん、舞台も全て見ています!近衛十四郎さんも大好きで、殺陣が素晴らしかった出すね!蠢動は感動的でした!和太鼓も余韻が後を引きました。
by 廣澤靖子 (2013-10-23 23:57) 

トプ・ガバチョ

>廣澤さん、初めまして!
ワテも目黒祐樹さんは大好きな俳優さんです。
若かりし頃はその日本人離れした容姿がとにかく格好良かったですが、『いただき勘兵衛』や『弥次喜多隠密道中』等での髷姿も本当に良く似合ってるんですよね~。
最近はダウンタウンの「笑ってはいけない」シリーズに出演されるように、結構お茶目な方なんでしょうね。
この『蠢動 -しゅんどう-』では、どっしり構えた剣術指南役でシブい演技を見せていましたが、存在感だけで絵になる俳優さんですよね。
NHKの『スタジオパーク』『団塊スタイル』に出演された時には、彼の普段の生活を一部だけ垣間見れたようで、より一層好感度がアップしました。
by トプ・ガバチョ (2013-10-24 10:31) 

A・ラファエル

初めまして
三上監督のFBから飛んできました。

監督と西田 良さんの繋がりを知ってびっくりです。
実は自分のブログで書いているずっと賀状をやりとりしている
俳優さんは西田 良さんなのです。
by A・ラファエル (2013-10-24 10:48) 

トプ・ガバチョ

>A・ラファエルさん、初めまして。
西田良さんは、『素浪人 月影兵庫』にはまって以来、その斬られっぷりやどこかユーモラスなサンシタ役等、観ていて楽しくなる俳優さんで、逆に腕の立つ武士の役もきっちりこなせる剣さばきが好きです。
今で言えば、大人気の福本清三さんとイメージが重なるところがありますが、こうしたいぶし銀の俳優さんはなかなか出てこないですよね。
西田さんと年賀でやり取りされているとは羨ましい!
16mm版の『蠢動』、DVD化された時に特典として付いてくるかも知れませんが、是非是非観てみたいですね!
by トプ・ガバチョ (2013-10-24 15:46) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。